月次が遅い会社は、社長の勘で経営することになる

先月の売上と利益が出てきたのは、今月の何日だったか。

20日?それとも月末ギリギリ?

もし先月の数字が出る頃には、もう今月が半分以上終わっているとしたら——その間、社長は何を根拠に判断していたのだろうか。

「だいたいこのくらいのはず」「先月もよかったから、今月も大丈夫だろう」。そういった感覚で動いてしまっていなかったか。

月次が遅い会社では、社長が知らないうちに、勘で経営する状態に陥っている。

1|”先月の数字”を見ている間に、今月が終わる

月次報告書を受け取ったとき、その数字は何日前のものか。

たとえば月末締めで、数字が出るのが翌月20日以降だとしよう。1月の実績が見えるのは、2月の3分の2が終わった後ということになる。

その間に、採用の相談が来る。広告代理店から予算追加の提案が来る。仕入れ先の値上げ交渉がある。

数字がないまま、意思決定だけが積み上がっていく。

これを「問題だ」と感じていない社長は少なくないかもしれない。慣れてしまうと、それが普通に見える。ただ、慣れていることと、正しいことは違う。

2|数字が遅い会社で起きること

月次が遅いことで生じる問題は、「数字の把握が遅れる」という経理上の話にとどまらない。経営判断そのものに影響が出る。

たとえば、採用判断。

「もう1人採ってもよいか?」という問いに答えるには、今の人件費比率や利益水準を知る必要がある。それが2〜3週間前のデータしかないとしたら、判断の根拠が薄くなる。直感で動くしかなくなる。

広告投資も同じだ。「先月は広告を増やして手応えがあった」と言っても、それが利益につながっているかどうかは、数字が出なければわからない。原価が悪化していたとしても、それに気づくのが1ヶ月後では、対応が後手に回る。

「うちはそこまでシビアにやらなくても大丈夫」という感覚——それ自体が、遅い月次によって作られた感覚かもしれない。

3|社長が数字を見なくなると、現場とのズレが始まる

月次が遅いとき、社長はどうするか。数字が来るまで判断を保留するか、あるいは感覚で動くか。

多くの場合、後者になる。

それ自体は悪いことではないが、問題は、その状態が常態化したときだ。

社長が感覚で動いていると、部門責任が曖昧になりやすい。「なぜその数字なのか」を問われる文化が薄れ、KPIが形骸化する。現場は「どうせ上は数字を見ていない」という空気を感じ取る。

これは誰かのせいではない。仕組みがないから起きることだ。

月次が遅いまま組織が大きくなると、感覚と実態の乖離は、静かに、着実に広がっていく。問題が顕在化したとき、すでに相当のコストがかかっている、ということは起こりうる。

4|月次5営業日は”経理効率化”ではない

「月次を早くする」というと、経理の仕事を効率化する話のように聞こえるかもしれない。ただ、それは手段であって、目的ではない。

月次が5営業日以内に出る会社では、社長の意思決定の質が変わる。

先月の利益率が今月6日には手元にある。採用の打診が来た7日、その数字を見ながら「今の体力で行けるか」を判断できる。広告投資の結果を、感覚ではなく数字で確認しながら次の一手を考えられる。

「攻めてよいタイミング」と「抑えるべきタイミング」が、感覚ではなく根拠で判断できる状態。

あなたの会社では今、その状態にあるだろうか。もしそうでないとしたら、それは経理の問題ではなく、経営の視界の問題かもしれない。

5|早い会社は、何が違うのか

月次が早い会社が特別な人材を揃えているかというと、必ずしもそうではない。

違いの多くは、仕組みにある。

証憑(領収書や請求書など、経費処理の元となる書類)の回収ルールが明確か。部門ごとの経費入力期限が決まっているか。処理フローが標準化されていて、担当者が変わっても動くか。

これらが整っている会社では、経理担当者が頑張らなくても、自然と数字が集まってくる。整っていない会社では、担当者が毎月あちこちに連絡し、拾い集めながら月次をつくる。

まず、自社の月次は何日に出ているか確認してみてほしい。

それが15日より後なら、意思決定に使える数字が、常に半月以上遅れていることになる。

6|まとめ

このまま月次が遅い状態を続けることで、意思決定の精度は少しずつ落ちていく。

ただ、多くの場合、問題は「経理担当者の能力」ではない。

どこで数字が止まり、なぜ経営判断に間に合わなくなるのか——構造が見えていないだけ、というケースもある。

「どこで滞留しているのか」

「何がボトルネックになっているのか」

「今の体制で、どこまで早くできる余地があるのか」

「何から手をつければよいかわからない」

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